エイブラハム・ヒックスの「感情の22段階(EGS)」と波動上昇戦略の専門的分析

エイブラハムの感情の22段階と波動上昇ステップを示す図 心の探究
  1. I. 序論:感情の22段階と引き寄せの法則の基礎
    1. 1.1 エイブラハム・ヒックスの教えの起源と哲学的基盤
    2. 1.2 ロウ・オブ・アトラクション(LoA)とロウ・オブ・バイブレーション(LoV)の結合
    3. 1.3 感情の22段階(EGS)の定義:感情の羅針盤としての役割
    4. 1.4 抵抗(Resistance)の概念とボルテックス(The Vortex)の導入
  2. II. 感情の22段階:完全なスケールと振動分析
    1. 2.1 EGSの構造的理解:許可、転換、抵抗の三層構造
    2. 2.2 感情の22段階:詳細なマッピングと分析
        1. 感情の22段階(Emotional Guidance Scale: EGS)完全マッピングと振動分析
    3. 2.3 低振動感情における「怒り」の戦略的価値
    4. 2.4 レベル7「満足」とレベル8「退屈」の戦略的位置付け
  3. III. 波動上昇ステップ(Emotional Bridging)の実践技法
    1. 3.1 段階的な上昇の原則と「より良い気分になる思考」
    2. 3.2 感情の橋渡し(Emotional Bridging)詳解
      1. ステップ1:現状の感情の特定と受容
      2. ステップ2:意図的な「より良い気分になる思考」の構築
      3. ステップ3:安定と再上昇
      4. ステップ4:発声による感情の定着
    3. 3.3 低振動からの脱却戦略:怒り(17)の意図的な利用
  4. IV. ボルテックスへの移行と維持の為の実践ツール
    1. 4.1 瞑想による抵抗の解除
    2. 4.2 感謝の熱狂(Appreciation Rampage)
    3. 4.3 ポジティブな側面の日記(Book of Positive Aspects: BOPA)
    4. 4.4 未来の自己の脚本作成(Scripting Your Future Self)
    5. 4.5 結果への執着を手放す(Let Go of the Outcome)
  5. V. 結論と専門的洞察:EGSの評価と統合戦略
    1. 5.1 EGSの現代心理学における位置付けと機能比較
    2. 5.2 EGSの哲学的な長所
    3. 5.3 持続的な波動上昇を実現する為の統合戦略
    4. 5.4 【つまり】感情の22段階と「闇を味わい切る」こと
    5. 5.5 【まとめ / 結局】ワンネスとエネルギーの法則

I. 序論:感情の22段階と引き寄せの法則の基礎

1.1 エイブラハム・ヒックスの教えの起源と哲学的基盤

エイブラハム・ヒックスの教えは、エスター・ヒックスを通して伝えられる非物質的な「源のエネルギー」からの思想のブロックであり、彼ら自身を集合的な意識体「エイブラハム」と称している。

エスター・ヒックスはこのプロセスを一般的に用いられる「チャネリング」という言葉で表現しないものの、これを「内なる存在(Inner Being)または魂(Soul)」からの翻訳であると理解している。

この教えは、現代の意識変革の波において極めて大きな影響力を持っています。特に、ロウ・オブ・アトラクション(引き寄せの法則:LoA)に関する現在の理解の基礎的な源流であり、世界的なベストセラーとなった映画『ザ・シークレット』の着想源ともなりました。エイブラハムの教えは、LoAの基礎の正確な明確化と、その実践的な応用、そして最先端の意識の拡張に関する情報を提供し続けています。

1.2 ロウ・オブ・アトラクション(LoA)とロウ・オブ・バイブレーション(LoV)の結合

エイブラハムの教えの中核は、ロウ・オブ・アトラクションがロウ・オブ・バイブレーション(波動の法則)に基づいて機能するという原則にあります。この教義では、個人の感情の状態こそが、その瞬間に発している振動(波動)を直接的に示す指標であるとされます。この結合は、抽象的なエネルギーの状態(振動)を、感情という具体的かつ即座にアクセス可能なフィードバックシステムに変換する機能を持っています。

引き寄せの法則の作用原理として、宇宙は、個人が発している振動(感情)に常に一致する現実を具現化し、引き寄せると定義されます。したがって、望むものを具現化する為には、出来る限り「気分が良い」状態を維持することが重要であるとエスター・ヒックスは説いています。感情の22段階(Emotional Guidance Scale: EGS)は、この目標を達成する為に、段階的に気分を改善する方法を教えるツールとして開発されました。

1.3 感情の22段階(EGS)の定義:感情の羅針盤としての役割

EGSは、人間の感情を22の明確な段階を持つ垂直スケールでランク付けするシステムです。このスケールは、最高の振動状態である「喜び/感謝/愛」(レベル1)から、最低の振動状態である「恐れ/絶望/無力感」(レベル22)までをマッピングします。

このスケールは、単なる感情の分類表ではなく、「感情の地図」あるいは「羅針盤」として機能します。実践者はまず、現在自分が感じている感情をEGS上で特定し、次に、この羅針盤を使って、現在地からわずかに気分が良くなる次の感情へと意識的に焦点を移行させます。このプロセスは、感情を抑圧したり無視したりするのではなく、まず理解し、受け入れ、そしてより高い振動(抵抗の少ないエネルギーの流れ)へ向かう為の具体的なロードマップを提供する点で、個人の感情的熟練にとって不可欠なツールと位置付けられています。

1.4 抵抗(Resistance)の概念とボルテックス(The Vortex)の導入

EGSの理解において重要な概念が、抵抗とボルテックスです。

抵抗は、具現化のプロセスを妨げている低い振動の状態を指します。疑念、恐れ、苛立ちといった低振動の感情は、個人が望む現実の流入を妨げている状態にあることを示します。低い振動帯にいるということは、良いもの(具現化)を「抵抗している」状態にあることを意味します。

対照的に、ボルテックスは「振動的な現実」であり、個人がこれまでに発した全ての願望、意図、好みが、既に実現された「純粋な可能性」の形で存在するエネルギー空間です。これは物理的な場所ではなく、高い周波数範囲、すなわちアライメント(同調)の状態です。個人がボルテックスに入っている時、その人は「気分が良い」と感じます。

ボルテックスに入る為の役割は、願望を追いかけることではなく、自分の振動をボルテックスの振動に一致させることです。喜び、容易さ、感情的な明晰さと同調するほど、抵抗が解除され、ボルテックスへの入口が開かれます。

EGSは、この抽象的な引き寄せの教義を、22段階という具体的な数値と名前を持つ測定可能な「振動的データ」に変換しています。この構造により、実践者は感情を単なる出来事の結果としてではなく、自分の具現化プロセスに対する即時的な入力として捉え直し、感情の抑圧を避けつつ、エネルギーの流れ(抵抗の少なさ)に基づいて感情を評価することを可能にしています。

II. 感情の22段階:完全なスケールと振動分析

2.1 EGSの構造的理解:許可、転換、抵抗の三層構造

感情の22段階は、エネルギー状態に基づいて大きく三つのゾーンに分けられます。

高振動ゾーン(許可/アライメント) (レベル1〜7):
源のエネルギーとの同調が達成されている状態。このゾーンでは、具現化のプロセスが自然かつ容易に流れ、抵抗が最小限に抑えられています。

中振動ゾーン(転換/可変的な抵抗) (レベル8〜16):
エネルギーが停滞し始め、外部への非難や否定的な期待が発生しやすいゾーンです。ここでは、わずかな意図的な思考によって高いゾーンへ引き上げられる可能性と、より低いゾーンへ滑り落ちるリスクが共存します。

低振動ゾーン(強い抵抗/無力感) (レベル17〜22):
強い感情的苦痛とエネルギーの固定化が見られる状態です。具現化に対する強い抵抗が働いており、自己の力が感じられない状態です。

    2.2 感情の22段階:詳細なマッピングと分析

    EGSの完全なスケールは、以下の表の通りです。このスケールは、どの感情がどの振動数に対応しているかを理解する為の基本的なツールです。

    感情の22段階(Emotional Guidance Scale: EGS)完全マッピングと振動分析
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    レベル感情(波動が高い→低い)振動状態の特性主な概念
    1喜び/感謝/力/自由/愛 (Joy/Appreciation/Empowerment/Freedom/Love)完全に許可(ボルテックス内)。具現化が容易。源のエネルギーとの同調
    2情熱 (Passion)強い動機付けと創造的な勢い。活発な創造
    3熱意/意欲/幸福 (Enthusiasm/Eagerness/Happiness)楽観的な期待と勢いの構築。勢いの構築
    4ポジティブな期待/信念 (Positive Expectation/Belief)信頼と確信。疑いの不在。肯定的な焦点
    5楽観 (Optimism)困難の存在を認めつつ、好転を信じる。疑いの解放
    6希望 (Hopefulness)改善の可能性を垣間見る。抵抗の軽減。抵抗の軽減
    7満足 (Contentment)ニュートラルで平和な安定点。目標点。安定点(MVA)
    8退屈 (Boredom)エネルギーの停滞。中立から負への転換点(ピボット)。ピボットの機会
    9悲観 (Pessimism)負の側面への緩やかな傾倒。不安の始まり
    10苛立ち/短気/不満 (Frustration/Impatience/Irritation)軽い抵抗の表明。わずかなエネルギーの活性化。調整の必要性
    11圧倒 (Overwhelmed)思考の混乱と集中力の欠如。焦点の拡散
    12失望 (Disappointment)期待と現実の不一致によるエネルギーの低下。エネルギーの低下
    13疑念 (Doubt)自己信頼と宇宙への信頼の欠如。抵抗の増大
    14心配 (Worry)未来に対する負の想像。負の具現化への焦点
    15非難 (Blame)自分の感情の責任を外部に置く。抵抗の活性化
    16落胆 (Discouragement)希望の喪失。動力の減退。動力の減退
    17怒り (Anger)わずかな解放。受動的な無力感からの脱出。わずかな解放
    18復讐 (Revenge)怒りを具体的に行動に移す動機。負の持続
    19憎悪/激怒 (Hatred/Rage)長期に渡る強い負の感情。深刻な抵抗
    20嫉妬 (Jealousy)他者の成功に対する深い比較と欠乏への焦点。欠乏への焦点
    21不安/罪悪感/無価値感 (Insecurity/Guilt/Unworthiness)自己否定と内省的な抵抗。自己攻撃
    22恐れ/悲嘆/抑うつ/絶望/無力感 (Fear/Grief/Depression/Despair/Powerlessness)完全な抵抗(ボルテックス外)。エネルギーの停止状態。エネルギーの停止

    2.3 低振動感情における「怒り」の戦略的価値

    EGSのランキングにおいて、特に注目すべきは、負の感情間の順位付けです。一般的に低く見られがちな「怒り」(レベル17)は、「憎悪/激怒」(19)や「絶望/無力感」(22)よりも高い波動を持つとされます。

    これは、絶望や悲嘆(22)が、状況に対する無力感を固定化し、エネルギーを完全に停止させている状態であるのに対し、怒り(17)は、その状況に対する「これは不公平である」という積極的なエネルギーの表明である為です。怒りは、受動的な無力感からの脱却を提供し、エネルギーを一時的に爆発的に解放することで、次に進む為のわずかな勢いを生み出します。この視点から、EGSは、感情の道徳的な良し悪しではなく、その感情がどれだけエネルギーの流れ(勢い)を生み出しているかという点に焦点を当てて評価していることが分かります。

    更に、EGSは「嫉妬」(20)を「憎悪/激怒」(19)よりも低い位置に置いています。嫉妬は、外部の成功に焦点を当てながらも、その根源には自己の「無価値感」や「欠乏」(レベル21の要素)といった自己否定が強く組み込まれている感情です。憎悪が外部への攻撃的なエネルギーであるのに対し、嫉妬はより固定的で内省的な「欠乏」の周波数に基づいている為、より低い振動と見なされます。

    2.4 レベル7「満足」とレベル8「退屈」の戦略的位置付け

    レベル7の「満足」は、EGSにおいて極めて重要な安定点として機能します。積極的な「喜び」には至らないものの、否定的な抵抗が大幅に解除されたニュートラルで平和な状態であり、実践者が最低限維持すべき状態(Minimum Viable Alignment: MVA)として推奨されています。この「満足」の基盤を築くことで、そこから上(レベル1〜6)へは、積極的な思考によって容易に上昇が可能になります。

    また、レベル8の「退屈」は、高いゾーンから低いゾーンへ移行しやすい転換点、すなわちピボットの機会を提供します。退屈は、エネルギーが停滞している状態であり、まだ深刻な抵抗の明確な兆候がありません。したがって、わずかな意図的な努力(例えば、身の回りにあるものへの感謝)によって、楽観(5)や希望(6)へ容易に転換出来る戦略的なタイミングとなります。退屈は、実践者が抵抗を解除する為の最小の努力で最大の効果を得られる、エネルギー調整の好機を提供する状態と理解されます。

    III. 波動上昇ステップ(Emotional Bridging)の実践技法

    感情の橋渡しは、EGSを日常で利用する為の核心技術であり、現在の感情状態を意図的に改善し、ボルテックスへと向かう勢いを築く為の漸進的なアプローチです。

    3.1 段階的な上昇の原則と「より良い気分になる思考」

    EGSの原則は、感情的なシフトは急激な飛躍ではなく、一度に1〜2段階ずつ進むことで、初めて持続可能になるというものです。例えば、「絶望」(22)から「喜び」(1)へ飛び移ろうとすると、その高振動の思考は現在の振動状態と乖離しすぎて「偽物」に感じられ、かえって自己批判や抵抗を生じさせてしまいます。

    この為、実践の核心は、現在の感情よりもわずかに気分が良くなる、信じられる思考に意識的に焦点を当てることにあります。この段階的なアプローチは、心理学における認知行動療法の段階的な曝露に類似しており、現実と感情の間の認知的不協和を最小限に抑えながら、抵抗を徐々にリリースする為の戦略的プロセスです。感情の橋渡しとは、本質的に「安堵(リリーフ)の追求」であり、元の状態よりわずかに安堵感のある状態へと自己を導くことです。

    3.2 感情の橋渡し(Emotional Bridging)詳解

    ステップ1:現状の感情の特定と受容

    まず、EGS上で現在の感情(例:失望12)を見つけます。感情を抑制しようとするのではなく、それを「名付け、所有し、受け入れる」ことが重要です。このステップは、自分の感情状態の責任は常に自分にあるという、自己責任の概念を強化し、感情を単なる反応ではなく、波動状態を選択するためのツールとして捉え直す為の前提となります。

    ステップ2:意図的な「より良い気分になる思考」の構築

    次に、現在の感情よりも一つ上の感情に移行する為の思考プロセスを開始します。これは、必ずしもポジティブな感情である必要はありません。重要なのは、現在の抵抗をわずかに解除することです。

    例えば、誰かが常に遅刻することに「失望している」(12)場合、次のステップとして「苛立ち」(10)を採用出来ます。この思考は、「彼が私を尊重していないことが本当に悲しいし、失望している。くそっ!もうこれ以上待つなんてイライラする!」という言葉で表現されます。この苛立ちはまだ負の感情ですが、受動的な失望よりも能動的なエネルギー(抵抗の表明)を伴う為、波動的には上昇しています。

    ステップ3:安定と再上昇

    新しい感情状態(例:苛立ち10)にしばらく留まり、そのエネルギーが定着するのを待ちます。感情が安定したら、更に上の状態を目指します(例:苛立ち10から満足7へ)。ここで、自己の主導権を取り戻す思考に切り替えます。「もう気にしない。私は先に買い物に行く。自分で自分のスケジュールをコントロール出来る。それで全く問題ない」という思考は、外部への依存から脱却し、自己のエンパワーメント(1)や満足(7)に繋がります。

    ステップ4:発声による感情の定着

    特に実践の初期段階では、これらの「より良い気分になる思考」を声に出すことで、より強い感情を伴わせ、新しい波動状態を身体的にも定着させることが助けになります。

    3.3 低振動からの脱却戦略:怒り(17)の意図的な利用

    絶望や悲嘆(22)等、完全な無力感に陥っている状態は、最も抵抗が強く、そこから直接ポジティブな感情を見つけるのは困難です。このような場合、EGSの原則に基づき、わずかにエネルギーが活性化する感情を意図的に採用する戦略が有効です。

    怒り(17)や非難(15)は、エネルギーを外部に向け、自己を一時的に「被害者」から「抗議者」へとシフトさせます。この移行は、例え負の感情であっても、エネルギーが流れ始めることで波動が上昇するというEGSの核心的な原則を最大限に利用するものです。これにより、感情の停滞状態(エネルギーの停止)を打破し、次のステップへ進む為の勢いを確保します。

    IV. ボルテックスへの移行と維持の為の実践ツール

    感情の橋渡しは瞬間的なシフトを可能にしますが、持続的に高振動状態(ボルテックス内)に留まる為には、抵抗を体系的に解除し、高振動を恒常的に注入する為の具体的な実践ツールが必要です。

    4.1 瞑想による抵抗の解除

    瞑想は、意識的に思考を一時停止することで、心配、欠乏、努力といったネガティブな振動を非活性化する(抵抗を解除する)プロセスとして推奨されます。何かを積極的に「創造する」のではなく、抵抗を「させない」ことに焦点を当てることが、ボルテックスへのアクセスを助けます。

    エイブラハム・ヒックスは、毎日15分間の静かな瞑想を推奨しています。この実践により、抵抗が減るほど、個人は自然にアライメント(同調)へと上昇します。更に、具体的なツールとして、「ボルテックスに入る」ガイド付き瞑想が提供されており、一般的な幸福、財務、身体、人間関係等、特定の人生の領域におけるアライメントを促進することが意図されています。

    4.2 感謝の熱狂(Appreciation Rampage)

    感謝の熱狂とは、意識的に、心から感謝出来る全てのもの(大小問わず、物理的または非物理的な側面)を連続的にリストアップし、声に出すか書き出す練習です。

    感謝は、既に「持っている」という周波数に即座にチューニングする、最も直接的な高振動経路の一つです。既に良いものに焦点を当てることで、さらなる良いものが引き寄せられるというLoAの原理を利用します。実践では、2分間のタイマーを設定し、「私は暖かいお茶に感謝している。この部屋を照らす光に感謝している。私の持久力に感謝している」といった具体的な感謝を連続的に行うことが推奨されます。

    4.3 ポジティブな側面の日記(Book of Positive Aspects: BOPA)

    BOPAは、特定の人物、状況、または自分自身について、意図的にポジティブな側面に焦点を当てるためのジャーナリングツールです。エイブラハムの教えによれば、「あなたの中の源は、あなたのパートナー(または状況)の中にポジティブな側面しか見ていない」為、この実践は自己を「真の自己」と一致させる手段となります。

    具体的な方法としては、シンプルなノートを用意し、例えば「[人名] のポジティブな側面」といったテーマを設定し、その対象のポジティブな属性をひたすらリスト化します。この実践は、EGSのレベル15である「非難」(Blame)を解消し、人間関係における低振動を修復する為の高度に特化した波動調整ツールとして機能します。

    4.4 未来の自己の脚本作成(Scripting Your Future Self)

    脚本作成は、願望が既に叶ったかのように、その現実を詳細に記述する「振動的なアート」です。この練習は、過去や現在の欠乏に焦点を当てるのではなく、望む未来の感情的な豊かさと具体的な詳細を描写することで、現在の周波数を、ボルテックス内に存在する「未来の自己」の周波数と一致させることを目的とします。

    例えば、「私は目覚め、自分の人生に完全に夢中だと感じている。受信トレイを開くと、支払い済みのクライアントの確認メールが見える。私の心は軽く、日々は自由で、宇宙に深く導かれていると感じる」といった記述を行います。このプロセスは、潜在意識を再配線し、願望実現を加速させる為の強力なアライメントツールです。

    4.5 結果への執着を手放す(Let Go of the Outcome)

    ボルテックスへの移行と維持のパラドックスの一つは、結果を強制しようとすればするほど、欠乏の振動が活性化し、ボルテックスから弾き出されてしまうという点です。実現の「いつ」「どのように」に執着することは、抵抗を活性化させます。

    この為、実践者は、結果を宇宙に完全に委ね、「今」気分が良いことに焦点を当てる必要があります。切迫感を解除し、信頼と喜びの振動にシフトすることで、願望は最も容易に流れ込むとされます。これは、感情の橋渡しが示すように、ボルテックスのエネルギーが、達成感だけでなく、「安堵」(抵抗のリリース)にも同様に応答する性質を利用しています。

    これらの実践ツールは、二重の機能を持っています。一つは、瞑想や執着の手放しによるネガティブな思考の停止(抵抗の除去)であり、もう一つは、感謝の熱狂やスクリプティングによる高振動の意図的な活性化(波動の注入)です。この両輪を組み合わせた統合的な戦略こそが、持続的な高振動状態を築く上で最も効果的であると分析されます。

    V. 結論と専門的洞察:EGSの評価と統合戦略

    5.1 EGSの現代心理学における位置付けと機能比較

    エイブラハム・ヒックスのEGSは、その実践的価値にもか関わらず、科学的な測定法や心理統計学的な検証に基づいて構築されたものではありません。その為、その妥当性は主に経験的な(実践の結果としての)効用に依存します。

    しかし、現代心理学のモデルと比較すると、EGSの機能的な独自性が明確になります。感情知能(EI)のモデル(サロヴェイとメイヤー、ゴールマンのモデル等)は、感情の認識、理解、管理能力といった知的な側面を測定・育成することに焦点を当てています。これに対し、EGSは、この感情管理能力に対して、明確な垂直的なロードマップと「次に目指すべき感情」という具体的な処方箋を提供します。EIが「感情を理解する知性」を提供するなら、EGSは「感情を物理的結果に導くための羅針盤」として機能します。

    また、ポジティブおよびネガティブな感情を独立した二つの次元で測定するPANASスケールといった心理測定ツールと異なり、EGSは感情を一軸の振動スペクトルで評価します。PANASが主に感情状態の「診断」を目的とするのに対し、EGSは「実践的な介入」と「段階的な改善」を目的としており、常に上方への動きを促すという点で、実践者に即座の行動指針を提供する独自の価値を持っています。

    5.2 EGSの哲学的な長所

    EGSの採用には、いくつかの重要な哲学的な長所があります。第一に、感情を道徳的に評価したり抑圧したりするのではなく、まずその状態を受け入れることを推奨します。そして、無力な状態(レベル22)にある場合でも、怒り(17)や非難(15)といった、よりアクティブなエネルギーを含む感情を戦略的に採用することで、最も苦痛の少ない道筋(感情の橋渡し)を通じた建設的な脱却を支援します。

    第二に、EGSは、感情を外部の出来事に対する受動的な反応ではなく、自己の具現化プロセスにおけるフィードバックであり、常に個人が選択出来る波動状態であると再定義します。これにより、個人は自分の経験に対するコントロール感と力を取り戻し、エンパワーメントの哲学を確立します。

    5.3 持続的な波動上昇を実現する為の統合戦略

    EGSと関連する実践ツールの分析に基づき、持続的な波動上昇を実現する為の最も洗練された戦略は、以下のような統合的アプローチとなります。

    自己認識の恒常性: 
    EGSを日常的な自己評価ツールとして活用し、現在の振動状態を常に特定します。感情が「羅針盤」であることを認識し、負の感情が出た際には、自分が抵抗状態にあることを受け入れます。

    抵抗の優先的な解除: 
    意図的なポジティブ思考(感謝の熱狂)を試みる前に、まず瞑想や結果への執着を手放すことを通じて、思考のノイズと抵抗の土台を静止させることが重要です。

    満足レベル7の維持: 
    日々の感情的なベースラインをレベル7(満足)に設定し、これを感情的な「ベースキャンプ」として維持します。このニュートラルな状態を確保することで、エネルギーの消耗を防ぎ、ボルテックスへの容易なアクセスを可能にします。

    統合された実践: 
    感情の橋渡し(日常の瞬時の感情シフト)と、感謝・瞑想・BOPA(持続的なアライメントの強化)といったツールを組み合わせます。瞬間的な改善と長期的な基盤構築を両立させることで、願望実現を加速させる、一貫した高振動状態の維持が可能となります。

    5.4 【つまり】感情の22段階と「闇を味わい切る」こと

    ここからは私の個人的意見ですが、まとめると感情を「波動の重さ(闇)」から「波動の軽さ(光)」への連続体として捉えています。

    最下層の感情(闇・ドロドロ):
     絶望(22)、罪悪感(21)、憎しみ(19)等は、非常に重い波動(ドロドロ)とされています。

    上昇のコツ:
     このスケールでは、最下層から一気に光の領域(喜び、感謝、信念等)へジャンプするのは不可能であるとされます。一段飛ばしはしない。例えば絶望(22)から「感謝(5)」へはジャンプ出来ません。まず「怒り(19)」や「心配(18)」を経由します。

    これは、「闇のドロドロを味わい切る」というプロセスを間接的に示唆しています。

    「味わい切る(感じる)」ことの重要性: 
    怒りや嫉妬などのネガティブな感情を「感じきって、手放す」ことが、次の段階へ上昇する鍵であると説明されています。これは、感情を抑圧するのではなく、そのエネルギーを認識し、解放するステップと言えます。

    ネガティブの通過点としての役割: 
    怒りや嫉妬も「波動が動き始めたサイン」として捉えられており、完全に静止した絶望の状態(無力・鬱)よりも、次のステップへ向かうた為のエネルギー(コンパス)として機能します。

      5.5 【まとめ / 結局】ワンネスとエネルギーの法則

      「ワンネス」の概念は、全てが繋がっているという認識であり、このスケールで言えば、宇宙の流れ(Source/ソース)を信頼している第4段階(ポジティブな期待・信念)以上の、第1段階(喜び・感謝・源との一体感)の領域に近いと言えます。

      エネルギー的に見ると、

      低波動(闇)は、宇宙の流れに対する強い抵抗の状態です。

      高波動(光・ワンネス)は、宇宙の流れに対する抵抗ゼロ(信頼)の状態です。

      「闇のドロドロ」を感じきって少しでも抵抗を緩める(例: 絶望→怒りへ)ことが出来れば、それは「ワンネス」に向かう為の必然的な通過点、つまり「光を得る為」の必要なステップである、という解釈が成り立ちます。

      したがって、「闇のドロドロを味わい切って抵抗を緩めることが、結果的に光の領域(ワンネス)へ至る道となる」というこの「感情の22段階」の哲学と非常に合致していると言えます。焦らず生きて参りましょう。

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